○三宅村基本構想
平成14年12月19日
改定
第1章 基本理念
1 基本理念
三宅島は、豊かな緑を背景とした、アカコッコを代表とする野鳥の宝庫であり、珊瑚など多彩な海洋生物が生息する、多様で豊かな自然環境に恵まれた島である。また、縄文時代からの歴史的蓄積とともに、南方方面からも黒潮に乗って各種の文化が流入し、本村で醸成された独特の文化を保持している島でもある。世界都市東京の一部でありながら、このような自然、歴史・文化を有する三宅島は、人々の自然環境への関心の高まりや自然志向の高まりの中で、都民共有の財産と位置づけることができる。
一方、三宅島は富士火山帯に属する活発な火山島であり、数々の噴火災害を被りながらも、たくましく暮らし続けてきた人々の歴史を有している。しかし、平成12年に発生した雄山噴火は、これまでの予想を超えた大噴火となり、火山性ガスの放出による長期的な全島避難という異例な状況を招き、島民の暮らし、島の社会経済は大きな打撃を受けている。
このような状況のもと、まず、三宅村の課題としては、長期化する避難生活の中で、島民の暮らしの安定化を図り、帰島後の生活再建も含めて、島民が「安心して」「活き活きと」「安全に」生活できる環境を整えていくことである。
また、今後の三宅島の復興は、基本的には島民、行政の自助努力のもと、島民と行政が密接な連携を図り推進していくものであり、これまで以上の経済の活性化が求められる。そのため、三宅島の大きな資源である自然、歴史・文化を活かし、観光産業を島内産業の核として位置づけ、他産業との密接な連携を図りながら、地域振興を推進していく必要がある。
さらに、そうした取り組みを支えていくため、将来においても予測される噴火などの災害に強い島づくりを目指し、「火山と共生する島」として、世界的なモデルとなるような防災体制の強化が必要となっている。
以上を踏まえ本計画では、次の3つを基本理念と定める。
■ 三宅島民の生活再建を最優先とした計画とする(生活再建)
■ 火山をはじめとした島の自然と三宅島で培われてきた文化や伝統を活かし、世界に誇れる観光地としての三宅島振興を実現するためのきっかけとなる計画とする(地域振興)
■ 噴火などの災害に備え、災害に強い三宅島づくりを目指した計画とする(防災しまづくり)
第2章 将来像と将来人口
1 将来像
基本理念で掲げた、島民の生活再建の優先、観光を機軸とした地域振興、防災しまづくりに基づいた取り組みを推進していくことにより、三宅島の目指す将来像を、次のものとする。
人と自然にやさしい健康で豊かな村
この将来像は次のような考えに基づいている。
三宅島は火山、野鳥、黒潮などといった特性を持つ、美しくも時には厳しく、雄大な自然を有し、これら環境の中で、人々は独自の歴史・文化を育みながら、健康な暮らしを営んできた。
その暮らしは思わぬ噴火災害により一時中断されたが、これからの生活再建に励み、自然の回復とあわせて島民が地域の自然を守り、あるいは自然の厳しさと共生しながら、三宅島民としての誇りを持って生きていく。
また、このような三宅島の自然、歴史・文化、人々の暮らしは、都市島民をはじめとする島外の人々に感動を与えるものであり、東京を軸に開かれた交流の島として、島民一人ひとりがホスピタリティ(もてなしの心)を持って多くの人々を招き、地域社会を活性化させていく。
このような三宅島の将来像は、噴火災害が発生する以前から目指している姿であり、第三次三宅村総合計画に引き続き「人と自然にやさしい健康で豊かな村」を目指すものとする。
次の図は、社会基盤施設の復旧を復興の礎として、「生活再建」「地域振興」「防災しまづくり」という復興の3つの柱がお互いに関連しあいながら、島ぐるみで一体的に地域運営システムを形成し、三宅島が「人と自然にやさしい健康で豊かな村」といった災害復興の花を咲かせることをイメージしたものである。
2 将来人口
本村が目標とする将来人口(2011年)は、「定住人口」と観光客を中心とした「交流人口」を含めた「5,150人」と想定する。
各人口の想定対象年=2011年
将来人口 (a+b) | 定住人口 (a) | 交流人口 (b) |
5,150人 | 3,800人 | 1,350人 |
第3章 基本方針
基本理念を受け、今後の三宅島の復興、地域づくりに向けた基本方針の柱を、次の3つとする。
基本方針における3つの柱の関係は、観光を島内産業の機軸として位置づけ、他産業との連携を図りながら島全体の経済の活性化を図り、それにより得た収入で生活再建を行うことである。そうした取り組みを支えるために、防災体制の強化や質の高いインフラ整備などの防災しまづくりを進めていく。
また、本計画の推進のためには、まず、島民と行政が一丸となった地域づくりへの取り組みが必要であり、さらには、IT(情報通信技術)の戦略的活用、国や都などへの幅広い協力要請を含む行財政における戦略的な運営、広域的な視点に基づいた地域間交流・連携の強化を図っていく。
1 生活再建
―三宅島島民の生活再建支援策―
「生活再建」における基本方針は次のとおりとする。
◎特に高齢者や生活困窮者に対する配慮を高めながら、帰島後の生活再建はもとより、避難生活中の生活再建に対する支援をより一層充実し、島民の生活満足度の充実を図る。
◎全島民が円滑に帰島できるよう、帰島計画を定める。
◎島民の個人財産保全への配慮を高め、住宅の自力再建に係わる支援施策を充実するとともに、魅力ある定住環境の整備に努める。
◎帰島後の産業の事業再建を支援するとともに、きめ細かな雇用の場を作り出していく。
◎島民が安心して帰島できるよう福祉、保健・医療体制の充実に努める。
◎三宅島に誇りを持ち、三宅島の復興と将来を担う人材を積極的に育てる教育を推進する。
◎三宅島の歴史・文化、自然環境をあらためて島民自身が学習し、地域のすばらしさを再確認するとともに、そのすばらしさを来訪者に伝える人材を育てる。
◎島全体を「ひとつの家族」とし、老若男女が互いに支え合う密接なコミュニティや、来訪者、U・I・Jターン者を暖かく迎え入れる、開かれたコミュニティを形成する。
図 生活再建展開イメージ
2 地域振興
―世界に誇る観光地としての三宅島の将来計画―
「地域振興」における基本方針は次のとおりとする。
◎地域振興の機軸を「観光産業」とし、他産業との密接な連携を図る中で産業全体の効率的な発展を促し、島の経済を活性化させる。
◎三宅島の自然を生かした「エコツーリズム」の推進と島民の心温まる「ホスピタリティ」をキーワードに、三宅島の地域資源の魅力を引き出す施設・フィールド整備や魅力ある観光プログラムの開発などにより、中長期滞在客の誘致や観光入り込みの平準化を図り、来訪者の増大に努める。
◎農業・林業・漁業・商工業などについては、基盤整備の復旧・整備を図るほか、産品の高付加価値化への取り組み、インターネットの活用を含めた島内外への流通出荷体制の整備などを行うとともに、「グリーン・ツーリズム」をキーワードとして観光への積極的関与・寄与を行っていく。
◎火山礫や火山灰を有用資源として活用を図る新しい産業を目指すとともに、IT(情報通信技術)を用いたビジネスの積極的誘致と育成を図り、魅力ある就業環境を創造し自然と仕事のある島を目指す。
◎産業振興の基盤となる人材の確保・育成に努め、現在の後継者育成に加え、U・I・Jターン者の積極的な誘致に努める。
◎三宅島の自然や歴史など固有の特性を活かし、構造改革特別区域などの特例措置を導入することによる地域振興について検討する。
図 地域振興展開イメージ
3 防災しまづくり
―災害に強く、健康で豊かなくらしを支える社会基盤施設の整備計画―
「防災しまづくり」における基本方針は次のとおりとする。
◎「火山と共生する島」として世界的なモデルとなるような防災体制の強化に努める。
◎火山性ガスの脅威や将来の再噴火も視野に入れた土地利用の推進を図るとともに、森林など自然環境の回復や砂防事業を進める。
◎地域防災計画の充実、避難施設・拠点の整備、噴火予知システムの充実と災害情報の伝達手段の強化などを通じ、災害の規模に応じた避難体制の充実を図り、島民、来訪者の安全を確保する。
◎防災体制の強化並びに交流人口の増大を図るため、空路のジェット化、航路における高速船の導入など、島外交通の充実を促進する。
◎高度情報通信基盤の整備に努め、教育、医療・福祉、産業振興、防災、行政サービス、情報発信などあらゆる分野でIT(情報通信技術)の積極的活用を図る。
◎道路、水道、電力施設、電話などライフラインやし尿・ゴミ処理体制の復旧、整備拡充を促進するとともに、三宅島の環境特性を活かした自然エネルギーの開発を目指す。
◎火山研究の適地として、火山・防災の研究所などの誘致に努める。
図 防災しまづくり展開イメージ
第4章 土地利用の方針
1 ゾーニングの体系
今後作成するハザードマップでの噴火災害、泥流災害等の危険地域については、新たな個人財産の形成や社会基盤の建設は行わないことを前提とする。
そのうえで、生活再建・地域振興・防災しまづくりの分野での各事業を推進するために、三宅村を次のように14のゾーンに分ける。なお、各分野のゾーンは、それぞれが独立したものではなく、互いに関連しあい、相乗効果をもたらすものとし、すべての分野にわたって、火山との共生を目指す。
また、統一的な街並みの整備や広域的なバリアフリー化の推進など、島民・来島者にやさしく、三宅島らしい景観形成を目指す。
○保健・福祉・医療ゾーン
保健・福祉・医療サービスの向上を図るための中心となるゾーンである。
○教育・文化ゾーン
広い校舎、校庭など恵まれた教育環境をもつゾーンである。
○歴史ふるさとゾーン
三宅島固有の歴史・伝統・文化を継承し、島民及び来島者が島の歴史文化を学ぶことができるゾーンである。
○火山共生ゾーン
植林活動を含めた自然再生を速やかに促進するゾーン、自然の復元を観察していくゾーン、火口や村営牧場周辺の有効的な跡地利用を推進するゾーンとした、3つのサブゾーンからなるゾーンである。
○森・野鳥とのふれあいゾーン
三宅島の貴重な自然資源を構成する上で大きな要素である大路池周辺を中心として、野鳥などとふれあえる場を提供することを目的としたゾーンである。
○海とのふれあいゾーン
海水浴場やダイビングスポット、漁港などを有効的に活用しながら、来島者及び島民が共に三宅島の海を体感できるゾーンである。
○リフレッシュゾーン
火山活動の恵みである温泉を中心に、来島者や島民が健康増進・保養・癒しを享受するゾーンである。
○農業活性化(体験)ゾーン
島内で比較的平坦な地であり、施設の集中化、集団営農、体験農業など観光要素の導入により、農業を活性化させていくゾーンである。
○漁業活性化(体験)ゾーン
関連施設の統合・整備、つくり育てる漁業の推進などにより漁業を活性化させていくゾーンである。
○商工業・新産業活性化ゾーン
くさやなどの既存特産品の復活や、火山灰を利用するなどの新たな産業の掘り起こしとその活性化を推進していくゾーンである。
○防災避難拠点ゾーン
島民並びに来島者が火山と共生しながら安心して島で生活し過ごせるようにするため、更には今後起こりうる噴火や地震などの大規模災害にも対応できる大型の避難施設などを整備促進するゾーンである。
○交通利便化促進ゾーン
ジェット化空港の整備や緊急時におけるヘリポートなどの整備を推進するゾーンである。
○海上交通拠点ゾーン
大型船や高速船の就航に対応した港湾を整備促進するゾーンである。
○火山・防災研究拠点ゾーン
火山防災に関する研究所などの誘致を検討するゾーンである。
ゾーニング体系図
2 ゾーニング図
※上記ゾーニング図は、現状をもとに作成したものである。
今後は、このゾーニングを基本としつつ、より詳細な土地利用の方針や建築物等の誘導・規制に関する取り決めを行い、より一層魅力的な三宅島を形成していく。
第5章 施策の大綱
1 生活再建
(避難生活対策)
住宅の確保や雇用対策、就学対策など、現在実施されている避難生活に対する支援の継続・充実を図る。また、長引く避難生活を背景に生活が困窮している世帯に対しては、国や都に対し、生活保護法の弾力的な運用等について働きかける。さらに、長期的全島民避難というわが国の災害史上希にみる事態を考慮して、特別立法の制定を働きかけ、総合的な支援を求めていく。
(帰島対策)
全島民が円滑に帰島できるよう、総合的な帰島計画を策定する。また、住宅や店舗・事業所など島民の個人財産の保全を図るための一時帰宅について、その機会を充実していく。
(定住環境の整備)
住宅の再建は、噴火に伴う泥流災害や家屋を失った世帯だけでなく、すべての被災者の生活を安定させる上で不可欠である。復興にあたって重点を置くべき推進要素として、住宅の自力再建に係わる支援策を実施するとともに、新規村営住宅を建設する。また、三宅島の景観に調和する街並み整備、集落周辺の緑化、街区公園の整備など魅力ある定住環境の整備に努める。
(事業再建・就労対策)
農林水産業、商工業、観光業等の事業再建について、国や都への協力を求めながら、支援を充実していく。また、帰島後、復旧・復興事業に島民の雇用を積極的に図り、村の既存産業の復興に連携させていく。
(福祉の充実)
特別養護老人ホーム「あじさいの里」の拡充やケアホームなど高齢者ケア施設の整備を検討するとともに、介護サービスの充実を図り、高齢者の生きがい対策についても支援を図りながら、高齢者福祉の充実を図る。
児童福祉に関しては、子育てに対する支援を行政だけでなく、地域全体で支援する環境づくりを進めるとともに、こども家庭に対する支援を充実させる。
障害者福祉は、作業所や通所訓練施設の整備、医療ケア・在宅福祉の充実を通じて社会復帰や自立を支援する。また、障害を持つ人、持たない人が共に生きる社会の醸成に努めるとともに、全ての人にやさしいまちづくりを行う観点から、島内のバリアフリー化を推進する。
(保健・医療体制の充実)
島民が安心して帰島し、生活できるよう、中央診療所の再開に向けた医療施設の整備と医療スタッフの充実を図るとともに、救急医療体制のより一層の強化を図る。恵まれた自然環境、新鮮な食材、温泉など三宅島の特性を活かした健康づくりのあり方を検討し、普及啓発を図るとともに、島民の生涯にわたる一貫した健康管理を行うため、島民の健康情報管理システムの構築を検討する。また、総合的な健康づくり・健康管理活動の拠点として保健福祉総合センターを整備する。
(学校・社会教育の充実)
学校教育においては、三宅島民としての誇りや郷土意識の醸成を図るため、島の歴史・文化、生業、自然を学習する機会を充実する。また、今後の島づくりを担う人材を育てるため、情報活用能力の育成を図るとともに、都立三宅高等学校に「海洋観光科」など特徴ある学科の創設を目指す。
社会教育では島民のニ-ズに応じた多彩な社会教育活動を推進するとともに、今後の島づくりに求められる医療・福祉、IT(情報通信技術)の分野などにおける技術や資格、職能を取得できるような学習機会の充実に努める。
(文化・コミュニティの育成)
三宅島の歴史・文化を継承していくための機会や場を拡充するとともに、複合的な機能を有する「郷土資料館」の整備を検討する。火山や野鳥、海洋など島民が地域の自然にあらためてふれあい、学習する活動を通じて、エコツアーのガイド等を養成していく。
帰島後はもちろん、避難生活中も三宅島民間の親密で良好なコミュニティを形成し、島が一丸となって復興に立ち向かえるような環境を醸成する。また、U・Ⅰ・Jターン者や島外からの観光客を暖かく迎え入れる、開かれたコミュニティの形成を目指す。さらに、老若男女が互いに支え合う社会を形成するため、コミュニティ内でサービス、モノを循環させるエコマネーの導入について検討する。
2 地域振興
(観光)
三宅島の最大の資源は、火山、野鳥、海洋などの自然であり、その自然を生かした「エコツーリズム」の推進を図るとともに、島全体で来訪者を暖かく迎え入れる「ホスピタリティ」の醸成に努める。
三宅島の資源の魅力を高めるため、火山博物館・海洋文化施設・郷土資料館等が一体となった複合的な施設整備や、火山観光が行えるフィールド整備などを行う。火山、野鳥、海、温泉などを活かした魅力的な観光プログラムを提供することにより、来訪者のさらなる誘致や滞在泊数の増加、入り込みの平準化などを促進する。受け入れ態勢として、宿泊施設や飲食施設の魅力の向上を図るとともに、島外交通・島内交通の利便性を向上する。島内外に向けた観光情報の積極的な発信を行うとともに、三宅島ファンを育成していく。
(農業)
被災農地や農業基盤施設の早急な復旧を行うとともに、営農団体の育成・強化を図る。新規農産物・新技術・特産品の開発に努めるとともに、共選共販体制を推進し、島内外への安定的出荷体制を整備する。
観光面では「グリーン・ツーリズム」の推進を図り、農家民宿の開設による農作業体験・生活体験を提供したり、体験農園・飲食店・農産物直売所などの一体的な整備による一次産業から三次産業までを複合的に取り入れた展開について検討する。
(林業)
三宅島の森林における公的機能を果たすため、森林復元事業を推進する。そのため、林道など基盤施設の復旧・整備を促進させる。また、林産品の研究・開発を進めるとともに、植林活動自体を観光に活用していく。
(漁業)
各漁港の機能分担を図り、漁港の機能施設は阿古漁港に集約化し、漁港関連の施設の整備復旧や大型冷蔵庫・集出荷所・蓄養施設等生産基盤施設の集中整備を図る。漁獲の安定化を図るため、人工魚礁の整備、種苗放流事業、陸上養殖施設の整備等を行うとともに、大型定置網の導入について検討する。
水産加工による水産品の高付加価値化を図るとともに、島内外への流通出荷体制を整備し、宿泊施設への水産品の供給等を通じて観光を側面支援する。観光面では「グリーン・ツーリズム」の推進を図るとともに、グラスボートの導入や大型定置網の観光への活用等に取り組んでいく。
(商工業・新産業づくり)
特産品の復活・開発を進めるとともに、火山礫・火山灰を有用資源として見直し、建材事業の復活を図るほか、新しい産業の育成に努める。三宅島のイメージを反映させた「三宅島ブランド」を開発し、共同PRと販売の拡大につなげていく。
商業については、その復活を積極的に支援するとともに仕入れの共同化などでコスト削減を図っていくほか、店舗において「観光ガイド」としての役割を果たしていく。
ITを活用したビジネスの誘致に努めるとともに、島民の起業についても支援していく。
(人材確保・育成)
人材育成基金の創設や奨学金制度、農地や漁具の貸し出しなどについて検討し、U・Ⅰ・Jターン者の誘致も視野に入れ、産業従事者の確保・育成に努める。
3 防災しまづくり
(防災に配慮した土地利用の推進)
今後作成するハザードマップを踏まえ、噴火に伴う泥流災害等に配慮するとともに各地区の特性を活かした土地利用の推進を図る。
(治山・砂防の推進)
泥流や急傾斜地崩壊等の防止対策として治山・砂防事業を推進するとともに、森林の持つ公益的機能や噴火前の生態系等に配慮しながら、森林の回復を図っていく。
(防災・避難体制整備)
島民や来訪者の命や暮らしを守り、災害に強い島づくりを実現するために、地域防災計画の充実に基づいて、避難施設・拠点の整備や、噴火予知監視システムの充実および情報伝達体制の強化、消防施設・体制等の充実に努める。また、島民や来訪者に対し、防災・避難体制の周知を図っていく。
(島外交通体系の整備)
本土との交通は、島民の暮らしにおける利便性向上、産業振興、交流人口の増大化・防災の充実強化等を図る上で不可欠なものである。そこで航路については、伊ヶ谷漁港の避難港整備を促進するとともに、ジェットフォイル等高速船の就航や新規航路の開設等を関係機関に要請し、空路については、ジェット航空機の就航を目指して、ジェット化に対応した空港整備を要望していく。あわせて、伊豆諸島間交通ネットワークの充実を図っていく。
(島内交通体系の整備)
島内道路の復旧・整備を進めるとともに、主要拠点施設等へのアクセス道路の整備や道路沿線の景観形成、バリアフリー化等を進め、安全、景観、快適性に配慮した道路交通網整備を図る。また、島内で唯一の公共交通機関である村営バスを復旧し、運行ルート等の充実により島内交通の向上を図り、島民・観光客の利便性を高め利用促進を図る。
(情報通信の整備)
全島にわたって携帯電話が通じるよう移動通信用施設の整備を促進するとともに、高度情報通信基盤の整備を図り、防災、教育、医療・福祉、産業振興、行政サービス等の分野において情報化の推進と活用を図り、島民の誰もが情報システムを利用しやすい環境づくりを進める。
(上下水道の整備)
上水道については、水道供給施設の整備拡充とともに災害等の非常時の給水体制を整え、安全で良質な水の提供、及び水道水の安定供給を図っていく。
し尿・生活雑排水等の処理については、合併処理浄化槽の普及を積極的に推進するとともに、し尿処理施設や市町村設置型による合併処理浄化槽の整備について検討していく。
(廃棄物の適正処理)
噴火災害によって発生した、大量の土砂や崩壊家屋、廃車・廃家電製品等の災害廃棄物処理については、島内における適正処理の検討とともに、国、東京都への協力支援を要請していく。一般廃棄物については、リサイクルの推進や資源化等によりごみの排出を極力抑制し、自然環境と生活環境への影響を重視した高度な処理体制を確立していく。また、産業廃棄物・廃車・廃家電製品等の処理については、本土の適正な処理ルートを積極的に活用するとともに、伊豆諸島間の連携に基づいて効率的な処理体制を整備する。
(エネルギー供給体制の整備と研究・開発)
現有の発電施設の復旧や機能の向上を図り、将来の人口動態や産業動向にも対応し、噴火等の災害時にも安定した電気供給が可能な体制整備を進める。
また、三宅島の環境特性を活かした自然エネルギーの導入・活用を進めるための研究・開発を促進する。
(火山・防災等に関する教育研究機能の充実)
火山防災研究の適地として、火山防災研究所の誘致や島外の研究・開発機関との連携強化等を図るとともに、島民や来訪者に対する自然環境や防災教育等の推進を図っていく。